menu
シオンとの架け橋トップページに戻る

シオンとの架け橋では、イスラエルニュースを無料メールマガジンで配信中です。

イスラエルについて

その他

バラガン・コラム-イスラエルあれこれ 他の記事一覧はこちら

再々総選挙とネタニヤフ免責問題:
—民主主義の本質とは何かをめぐる争い— 2020.1.25

newyorker.com より)

世界初、前回のバラガンコラムに、昨年最大のニュースは再々選挙の実施決定!と紹介しました。

2度の組閣に失敗し、去年11月に起訴される事にもなったネタニヤフ首相が「三度目の正直」で連立政権を発足させるか否か。
再々選挙という事もあり、日本ではあまり詳しく報道されないかも知れませんが、今回の総選挙、実はネタニヤフの信任選挙だけではありません。日本では考えられかも知れませんが、国民主権と法の下の平等という民主主義を支える2つの原則がぶつかった時、果たしてどちらに軍配が上がるのか/どちらを国民は選ぶのか― 再々選挙はそんな民主主義国家としての価値観が問われる選挙でもあるのです。

現職の首相が起訴されたにもかかわらず選挙戦に入り免責を求めているという絶賛混乱中のイスラエルでは、どのメディアもこぞって報道合戦に明け暮れています。
幼稚園の子供ですら「免責」という聞き慣れない政治用語を知っているほどの大騒ぎ…
今回のバラガンコラムでは、この混迷を極める民主主義の限界…と言いたくなるイスラエル世論の状況をお伝えします。

今月15日、各党が選挙管理委員会に比例名簿を提出し、3月2日の投票日に向けいよいよ選挙戦の火蓋が切られました。そしてそのポイントになっているのはネタニヤフ首相の「免責決議問題」。日本のメディアでもニュースになりましたが起訴されたネタニヤフ首相が「免責決議」を国会に要求しています。

日本では「免責特権」というと、国会議員の演説等、議院での言動について院外での責任を問われない事を指しますが、イスラエルでは刑事告訴からの免責を指します。起訴された議員は免責の決議を国会に申し立てる事ができ、常任委員会での協議で免責を認めるべきとの結論を出せば本会議で採決が行われ、過半数の賛成(61票)を獲得すればその会期中に起訴される事はないというものです。


ネタニヤフ支持者はネタニヤフの愛称ビビから「ビビ主義者」とも呼ばれる

haaretz.co.il より)

ネタニヤフ首相は汚職疑惑が浮上してからの3年間、免責特権の行使には否定的な発言を繰り返してきました。しかし検事総長が収賄・背任・詐欺の罪での起訴を決定すると「免責特権と民主主義は相反しない」と認識を一転。免責決議の申し立て後の記者会見(1月1日)では「免責は民主主義の土台である」と発言しています。

冒頭にも書きましたが、このネタニヤフ問題は、イスラエルに「真の民主主義とは何なのか」という大きな疑問を投げ掛け、国をまさに二分する論争となっているのです。

リクード陣営は、多くの支持者が汚職疑惑による起訴はネタニヤフを首相の座から引きずり下ろすために、左派寄りの司法府が企てた陰謀だと固く信じています。彼らにとっては「免責否認は国民主権を否定する、民主主義の死」になるわけです。

そのためネタニヤフは「民主主義において、国の指導者を決めるのは(司法府ではなく)国民のみである」との趣旨の発言を続け、支持者たちも「ネタニヤフを首相に望むのは民意であり、国民主権であるべきだ」と免責を強く求めています。


ネタニヤフの辞任を訴えるデモにも数千人の参加者が…

haaretz.co.il より)


一方、危機感を感じ反対している国民も多数います。
確かに現首相が刑事告訴からの免責特権を有している民主主義国家(フランスや韓国など)はほかにもありますが、その多くは同時に任期制限があり、任期を終えれば免責特権は剥奪され、起訴される事になります。
しかしイスラエルでは、首相の任期に関する制限がありません。ですから国会で過半数の賛成を得られさえすれば、半永久的に刑事責任が問われないという状況も起こり得る訳です。

よって多くの有識者は「ネタニヤフが免責特権を得続ける事は、民主主義の危機だ」と警鐘を鳴らしています。「首相であっても法の下にあるべき」とネタニヤフが首相を続けることに反対するイスラエル人も、支持者と同じぐらい居るのです。

前者は国民主権を、後者は法の下の平等を盾にお互いの主張を「民主主義の危機」と批判する、そんな現象が今イスラエルでは起こっています。

現状でネタニヤフ首相の免責に賛成しているのは右派と超正統派2政党、計4党の55議席で過半数まで6議席足りません。主要TV各局が名簿提出後に行った最新の世論調査でも55~57議席となっており、第一党争い(現状:リクード32・青と白33と1議席差)を見ても2~5議席のリードを、ガンツ党首率いる青と白に許しています。現状のまま行くとネタニヤフ陣営は61議席を獲得できず、免責特権を得る事は出来ません。そして一度国会で免責決議が否決されれば以降の国会での申し立ては出来ず、刑事裁判が始まります。
法律上、実刑確定までは、議員及び首相職を辞める必要はありませんが、実際に裁判が始まれば首相業務との並行は困難であることは間違いありません。


まさに政治生命を賭けた選挙戦に臨むネタニヤフ。その視界やいかに。

93fm.co.il より)


ここ数年、いよいよ政権終焉と言われ続けながらも窮地を切り抜けてきたネタニヤフ首相。そんな不死身とも魔法使いとも呼ばれる彼が、果たしてこれから1月半で盛り返し、61議席を獲得できるのでしょうか。
そしてイスラエルの民主主義は、いったいどうなっていくのでしょうか。
架け橋Facebookでは選挙戦をはじめ、イスラエルの最新情報を配信しています)


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



TOP