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スコット(仮庵の祭り)・トリビア2017.10.8

超正統派が住む地域の中庭に所狭しと建てられたスカー。右上部には「高床式」のスカーも見られる。

haaretz.com より


イスラエルでは現在、ユダヤ歴の新年から半月が経ちスコット(仮庵の祭)という祭りが祝われています。スコットとは出エジプト後、イスラエル民族が40年間荒野を放浪し仮庵に住んだことを記念する祭りです。宗教的なユダヤ人の多くは祭りの7日間スカーで寝食を行い荒野での生活を追体験し、イスラエルでは世俗派の間でも庭やベランダにスカー(仮庵:スコットの単数形)を建てるのが習慣になっています。
今回のバラガンコラムでは、そんなスコットの豆知識をいくつか紹介したいと思います。


1.聖書の祭=農業の祭?

スコット(仮庵の祭)はペサハ(過ぎ越しの祭)、シャブオット(七週の祭・律法授与の祭)と並びユダヤ教の三大巡礼祭として知られており、聖書時代にはイスラエル民族がエルサレムへと上る事を命じられていました。
これら三大巡礼祭には興味深い共通点があります。それは全て出エジプトを祝う「歴史的な祭り」であると同時に、春祭り・秋祭りなど私たちにも馴染み深い「農業の祭り」でもある、という二面性です。
エジプトからの脱出を祝う春のペサハでは大麦が、トーラーの授与を記念し初夏に祝われるシャブオットでは小麦が、そして荒野での仮庵住まいを記念する秋のスコットではイチジクやブドウなどの果物が、それぞれ聖書の時代では収穫されていました。出エジプトを記念した三大巡礼祭は、大麦・小麦・イチジク・ブドウなど聖書や古代イスラエルにとってなじみ深い食物の実りを感謝する、収穫祭でもあったのです。


2.なぜ不毛な荒野での生活を収穫祭で祝うのか?

スコット前に売られているスカーを飾るためのグッズ。収穫祭という事もあり果物をモチーフとしたものも多い。

砂漠で40年間さまよっていた歴史と秋の収穫祭、これは一見相反する組み合わせです。なぜなら砂漠をさまよっていた間のイスラエル民族は遊牧民だったため、農業や収穫とは全く無縁な生活を送っていたからです。彼らが農耕を中心とした生活形態に戻ったのは、40年が経ったのち約束のイスラエルの地に入り定住者となってからでした。また農業的な意味でのスコットには秋の収穫だけでなく、(雨が降り始める)冬を前に最後の収穫を行い1年間の農作物に感謝をする、締めくくりとしての収穫祭という意味もありました。ではなぜこの矛盾する2つが、スコットという1つの祭りになったのでしょうか。
ユダヤの賢人たちは、これも人の弱さを知ったうえでの神の判断であったと解釈しています。と言うのも、明日も分からぬ放浪の身から農耕民族という定住民になると、人は時とともに恵まれた環境に慣れてしまい感謝の気持ちや過去を忘れ、現状が永遠に続くという幻想を抱く傾向があります。そこで毎年最後の収穫祭という恵の時に、あえて荒野での放浪という「原点」を思い起こし慢心せず謙虚に居るため、神は仮庵の祭と収穫祭を1つの祭として守るようイスラエルに命じた、と信じられています。
ユダヤ教の儀式では結婚式という幸せ・祝福の瞬間にも神殿が失われたエルサレムを嘆いたりと、喜びと悲しみが表裏一体になっているのが1つの特徴なのかも知れませんね。


3.仮庵・スカーにまつわる厳密な決まり

律法に則ったスカーを各家庭が建てられるよう、ベランダが不規則に作られた超正統派のアパート。

スコットと言えば、やはり祭りの名前にもなっているスカーです。原点回帰のため、ユダヤ人は7日間この仮庵の中で寝食を行い荒野での放浪を追体験するのですが、古くからこのスカーには細かい規則が定められてきました。形状や素材に関してはあまり縛りはなく屋根を植物で葺けば基本的にはオーケーなのですが、高さなどに制限があったり、特にスカーを建てる場所については「空の下」という単純なようで複雑な決まりがあります。
荒野での放浪中は全てのスカーが砂漠の真ん中、大空の下にありました。この事からスコットで使用されるべきスカーの上には、他の屋根や木の枝などの障害物があってはならず、日中太陽がスカーに当たった時にスカーの屋根の最低半分は影にならず日光を浴びなければならないなど、日照権的なユダヤ法(ハラハー)が細かく規定されています。日本の一般的なベランダにはひさしがあったり、マンションでは上の階のベランダが屋根になっていたりするため、ユダヤ法に則ったスカーを建てることはできなくなるのです。なのでイスラエルの超正統派が住むような地区には、スカーが屋根に遮られず日光を浴びるようベランダが不規則な位置に付いたマンションや、ひな壇状・階段状になっているマンションが多く見られます。こうすると、全家庭が各々のベランダにユダヤ法に則ったスカーを建てることができるのです。
しかし必ずしも各家のベランダがスカーを建てられる場所とは限りません。スカーを建てるほどのスペースがなかったり、屋根があったりと自分の家の敷地にスカーを建てられない家庭が大多数です。そんな超正統派たちは家の近くにある中庭や公園、駐車場などにスカーを建てるのです。スコット前に超正統派が多く住む地区に足を延ばすと、スカー乱立の様子が見られます。また鉄の骨組みで仮設のベランダを増設し、その上に「高床式スカー」を建てるワイルドな宗教的な家庭も・・・
この1週間は各町の役所もスコット恒例の不法建築に目をつぶるみたいです。


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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